○日吉津村自治基本条例

平成20年12月24日

条例第22号

私たちのむら日吉津村は、中国山地を源とする一級河川日野川の下流右岸に位置し、北は日本海に面し、東に秀峰大山を仰ぎ見る箕蚊屋平野の一角にあります。古来、河川の氾濫など幾多の苦難を乗り越え農地を拓き、日本海からの風雪を防ぐために黒松を育てるなど、常に進取の気象を発揮し村づくりに励んできました。

明治22年の村制施行以来、今日まで、単独で村制を維持し、農業の振興や企業誘致などにより、比較的財政の豊かな村として発展してきました。また、現在交通の要衝となり、交流人口も多く、賑わいのある村として独自の位置を占めています。

私たちは、先人が守り、創り育てた自然や歴史、文化に感謝し、未来を担う子どもたちが誇りと夢をもって、心豊かに育つふるさとを築き、次代に引き継いでいかなければなりません。

そのためには、「村民が村づくりの主役である」ことを深く認識するとともに、「地域のことは地域で考え、地域で決める」という住民自治の本旨に基づき、村民、議会、村そして地域・団体等がそれぞれの役割や責務を認識し、参画と協働による村づくりを進めていきます。

私たちは、日吉津村における自治の基本原則や村づくりのルールを分かりやすく定めて、村民みんなの共通認識とするとともに、村民憲章を重んじ誰もが安心して暮らせる日吉津村の実現を目指し、村の最高規範として、ここに自治基本条例を定めます。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、日吉津村における自治の基本原則を明らかにし、村民の権利と責務、議会及び村の役割と責務、住民自治の仕組みなどを定めることにより、共通認識を持って参画と協働の村づくりを推進し、自立した日吉津村を実現することを目的とします。

(用語の意味)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意味は、それぞれ当該各号に定めるところによります。

(1) 住民 村内に住所を有する者をいいます。

(2) 村民 住民のほか、村内で働く者、学ぶ者、活動する者並びに村内に土地又は家屋を有する者をいいます。

(3) 事業者等は、次に掲げるものをいいます。

 事業者 村内に事業所を有する者及び営利法人をいいます。

 団体等 村内に事務所又は活動拠点を有する営利を目的としない組織及び団体をいいます。

(4) 村 村長、教育委員会、選挙管理委員会、監査委員、農業委員会及び固定資産評価審査委員会をいいます。

(5) 参画 政策の立案から実施及び評価に至る各段階において、村民が主体的に参加し、意思形成に関わることをいいます。

(6) 協働 村民、議会及び村が互いの自主性を尊重しつつ、それぞれの果たすべき責任と役割を認識し、対等な立場で相互に協力して行動することをいいます。

(7) コミュニティ 地域の課題の解決に向けて、村民が協働して取り組む多様なつながり、組織をいいます。

(8) 自治会 集落の全戸加入を原則とし、その地域の運営や住民の親睦の中核を担っている自治組織をいいます。

(条例の位置付け)

第3条 この条例は、本村の自治の推進における最高規範であり、議会及び村は、最大限これを尊重しなければなりません。

2 議会及び村は、他の条例、規則等の制定又は改廃を行う場合には、この条例に定める事項を遵守しなければなりません。

第2章 自治の基本原則

(住民主権)

第4条 住民は日吉津村の主権者であり、議会及び村はその信託に忠実に応えなければなりません。

2 村民は村づくりの主役であり、参画と協働により村づくりを担うことができます。

(人権の尊重)

第5条 村民は、国籍や性別、年齢、障がいの有無等にかかわらず、人権が尊重され、誰もが自分らしく活動する権利を有します。

2 子どもは、その人権が保障されるとともに、年齢に応じて村づくりに参画する権利を有します。

(情報の共有)

第6条 村民、議会及び村は、村政に関する情報を互いに共有することにより、村民主役の村づくりを推進します。

(参画と協働)

第7条 村は、村民の意思を村政に反映するため、村政への参画の機会を拡充し、村民、議会及び村は、相互理解と信頼関係を深め、協働して村づくりを行うものとします。

第3章 村民等

(村民の権利)

第8条 住民は、地方自治法の定めるところにより、議員又は村長の選挙権・被選挙権・解職請求権、議会の解散請求権、条例の制定改廃請求権、監査請求権等を有します。

2 村民は、村づくりについて必要な情報の提供を受け、自ら取得する権利を有します。

3 村民は、生涯にわたり学ぶ権利を有します。

4 村民は、村による計画、実施及び評価の活動に参画する権利を有します。

5 村民は、村が提供する行政サービスを受ける権利を有します。

(村民の役割と責務)

第9条 村民は、自治の主体者であることを自覚し、積極的に村づくりに参画するよう努めるものとします。

2 村民は、村づくりに参画する場合には、自らの意見と行動が公益を増進させるよう努めるものとします。

3 村民は、村が提供する行政サービスに伴う負担を分任するものとします。

(事業者等の役割と責務)

第10条 事業者は、その活動を通じ、また持てる資源を活かして、地域の様々な分野において貢献するよう努めるものとします。

2 事業者は、事業活動にあたり、村民及び村に対し、その公益性を認識し社会的責任を負うものとします。

3 団体等は、地域社会の公共的活動の主体として、公共的サービスを広く担うことができます。

第4章 議会

(議会の役割と責務)

第11条 議会は、日吉津村における最高意思決定機関であり、村政運営が適正に行われるよう村政を監視し、けん制する機能を果さなければなりません。

2 議会は、村民の意思を把握し、政策に反映させるため、広く村民の声を聴く機会を設けなければなりません。

3 議会は、会議の公開を原則とし、村民との情報の共有を図り、開かれた議会運営を行わなければなりません。

(議員の責務)

第12条 議員は、村民の信託に応え、品位と責務を忘れずに、常に自己研鑽に努めるとともに、政策の形成等の職務を遂行しなければなりません。

2 議員は、広く村民の声に耳を傾け、常に村全体の利益を優先し行動しなければなりません。

3 議員は、自らの活動報告の場を設けるなど、村政等に関する情報について、村民に分かりやすく説明するよう努めるものとします。

4 議員選挙の立候補予定者は、自らの政見を示し、具体的に公約するよう努めるものとします。

第5章 村長等

(村長の役割と責務)

第13条 村長は、村政の代表者として村民の信託に応えて、この条例を遵守し、誠実かつ公正に村政運営にあたらなければなりません。

2 村長は、村民の声に十分耳を傾けた上で将来ビジョンを示し、村の行政能力を高めるとともに、村政運営に適切なリーダーシップを発揮しなければなりません。

(村長のローカル・マニフェスト)

第14条 村長選挙の立候補予定者は、政策の理念と目標を明確にして、達成度について具体的で検証可能な公約(以下「ローカル・マニフェスト」といいます。)を作成するよう努めなければなりません。

2 村は、立候補予定者がローカル・マニフェストを作成できるよう、その求めに応じて必要な情報提供に努めなければなりません。

3 村長は、村民の信託を受けたローカル・マニフェストを村政に反映させるよう努めなければなりません。

(村の役割と責務)

第15条 村は、村民の福祉の増進を図るため、公平・公正かつ誠実に村政を執行しなければなりません。

2 村は、村政の執行にあたっては、最少の経費で最大の効果を上げるよう努めなければなりません。

3 村は、村政に関する村民の意見を積極的に把握し、適切に村政に反映するよう努めなければなりません。

4 村は、職員と組織の能力が最大限に発揮できるよう、効果的な職員の任用、人材育成及び適正な人員配置に努めなければなりません。

5 村は、村民等による自主的な村づくり活動に対し、情報提供や助言に努め、適切な調整及び相談等によりこれを支援します。

(組織の構成)

第16条 村は、多様化、高度化する村民ニーズに、迅速、的確かつ総合的に対応できる組織づくりに努め、村民に分かりやすいものにしなければなりません。

(職員の役割と責務)

第17条 職員は、村民の幸せを願い村民生活の向上と村民サービスの充実を目指して、公正、誠実かつ効率的に職務を遂行しなければなりません。

2 職員は、職務に必要な知識、技能等の向上に努めなければなりません。

3 職員は、自らも地域の一員であることを認識して、村民と協働し、村づくり活動に積極的に参加するよう努めなければなりません。

第6章 村政運営

(総合計画)

第18条 村は、村づくりを総合的かつ計画的に進めるための基本構想及びこれに基づく基本計画(以下「総合計画」といいます。)を、この条例に沿って策定するとともに、新たな課題に対応できるように不断の検討を行わなければなりません。

2 村は、総合計画の策定、見直し、評価等にあたっては、広く村民の参画を得て行わなければなりません。

(財政運営)

第19条 村は、総合計画に基づき財政計画を定めるとともに、財源を効率的かつ効果的に運用することにより、健全な財政運営を図らなければなりません。

2 村は、予算、決算などの財政状況や財産の保有状況及び財政見通しを明らかにし、村民に分かりやすく公表しなければなりません。

(行政評価)

第20条 村は、総合計画の進行管理を行うため、施策等の達成度や成果などを評価し、その結果を村民へ公表するとともに、その評価に基づいて、村政運営の改善に努めなければなりません。

(法令遵守と倫理規範の確立)

第21条 村は、法令を遵守し、適正に運用しなければなりません。

2 村は、行政執行に関し、違法な手段による要求及び公平性を損なう不当な要求に応じません。

(監査)

第22条 監査委員は、村の財務等にかかる監査を行うにあたり、事務事業の適法性や有効性及び効率性の評価を踏まえた監査を行わなければなりません。

(危機管理)

第23条 村は、村民の身体、生命及び財産を守り、暮らしの安全を確保するため、迅速かつ適切な対応ができる体制を確立しなければなりません。

2 村は、村民及び関係機関等との協力、連携により、不測の事態に対し総合的かつ機動的な対応を実践しなければなりません。

第7章 情報の共有

(情報の共有)

第24条 村は、村政に関する情報を広報紙等を通じて積極的に提供するとともに、村民の意向を把握するなど情報収集を図り、村民との情報共有に努めなければなりません。

2 村民は、村づくりの主役として、積極的に情報を得るように努めなければなりません。

(情報の公開)

第25条 村は、村民の知る権利を尊重し、公正で開かれた村政の実現のため、別に条例で定めるところにより、村政に関する情報を公開しなければなりません。

(個人情報保護)

第26条 村は、別に条例で定めるところにより、個人情報の保護を厳正に行うとともに、自己に関する個人情報の開示、訂正等を請求する村民の権利に対して、適切な措置を講じなければなりません。

(説明責任)

第27条 村は、施策等の企画立案から実施、評価に至るまで、その経過や内容等を村民に分かりやすく説明するとともに、村民から質問等を受けたときには、迅速かつ誠実に応答するように努めなければなりません。

第8章 参画と協働の推進

(参画)

第28条 村は、村政に関わる施策等の企画立案、予算化、実施、評価のそれぞれの過程において、村民が参画できる機会を拡充するよう努めなければなりません。

2 村は、村政への参画において、村民が国籍や性別、年齢、障がいの有無等によって不利益を受けないよう配慮しなければなりません。

(協働)

第29条 村民、議会及び村は、相互理解と信頼関係の下、協働の村づくりに努めなければなりません。

2 村は、協働の村づくりを推進するにあたり、村民の自主性を損なうことなく、その自発的な活動を支援するよう努めなければなりません。

(コミュニティ)

第30条 村民は、地域の中で安心して暮らし続けることができるよう、自主的にコミュニティの活動に参加し、相互に助け合うとともに、地域課題の解決に向けて協力して行動するものとします。

2 村民及び村は、地域に根ざしたコミュニティの役割を認識し、その組織や活動を守り、育てるように努めるものとします。

(自治会)

第31条 自治会は、集落の自治組織として、地域の様々な課題解決に対し総合的な役割を担い、地域の運営や住民の親睦、自治会公民館の管理及び活用などを行うものとします。

(審議会等)

第32条 村は、審議会等の委員を選任する場合は、原則として村民から公募し、男女の均衡に配慮しなければなりません。

2 村は、法令又は条例等に特別の定めがあるものを除き、原則として審議会等の会議を公開しなければなりません。

(村民意見募集)

第33条 村は、重要な条例や計画の策定等にあたり、村民の意見を反映させるため、パブリック・コメントやアンケート調査の実施、公聴会の開催等適切な方策を実施しなければなりません。

(住民投票)

第34条 村長は、村政に関する重要事項について、住民の意見を直接問う必要があると認めるときは、住民投票を実施することができます。

2 村は、住民投票の投票資格要件及び実施に関する手続き、その他必要事項について、別に条例で定めなければなりません。

3 村民、議会及び村長は、住民投票の結果を尊重しなければなりません。

(住民投票の請求等)

第35条 永住外国人を含む18歳以上の住民は、村政に係る重要事項について、その総数の50分の1以上の者の連署をもって、村長に住民投票を請求することができます。

2 村長は、前項の請求があったときは、意見を付してこれを議会に付議しなければなりません。

3 議員は、村政に係る重要事項について、議員定数の6分の1以上の賛成を得て、住民投票の実施について発議することができます。

4 村長は、前2項の場合において、議会が出席議員の過半数の賛成により議決したときは、住民投票を実施しなければなりません。

5 村長は、第1項の請求に係る署名者数が永住外国人を含む18歳以上の住民総数の4分の1を超えたときは、第2項の規定によることなく、住民投票を実施しなければなりません。

第9章 国、他の自治体等との関係

(国、県及び他の自治体との協力・連携)

第36条 村は、国及び鳥取県と対等の関係にあることを踏まえ、適切に役割分担することにより、自治の発展のために協力して自主的に関係の構築に努めなければなりません。

2 村は、共通する地域課題の解決や効果的で効率的な村政運営のための広域事務処理、大規模災害時の相互応援など他の自治体と積極的に協力、連携しなければなりません。

第10章 日吉津村自治基本条例推進委員会

(推進委員会の設置等)

第37条 村長は、この条例の実効性を高め、村民参画と協働の適正かつ円滑な推進及び村民による自治の発展を図るため、日吉津村自治基本条例推進委員会(以下「推進委員会」といいます。)を設置します。

2 推進委員会は、この条例の改正などに関する村長の諮問に対して審議し、村長に答申するほか、軽微な変更などについては意見書を提出することができます。

3 推進委員会は、前項に規定するもののほか、自治の推進に関する重要事項について、村長に提言することができます。

4 村長は、推進委員会の答申及び提言を尊重しなければなりません。

5 推進委員会の組織及び運営に関し必要な事項は、村長が別に定めるものとします。

第11章 条例の改正

(条例の改正)

第38条 村長は、この条例が協働の村づくりの推進にふさわしいものであるか、推進委員会に意見を求め、村民の意見の適切な反映のもと、必要に応じて改正の手続きを行います。

この条例は、平成21年4月1日から施行します。

日吉津村自治基本条例

平成20年12月24日 条例第22号

(平成21年4月1日施行)

体系情報
第1編 規/第4章
沿革情報
平成20年12月24日 条例第22号